シャンパンがお祝いの席で欠かせないお酒であることは、一般的に認識されているものの、なぜお祝いに適している飲み物なのかという理由については、知らないという方も多いかと思います。
そこで、シニアソムリエである久保友則さんに、シャンパンに込められた意味や、贈り物として選ぶ際のコツについて教えて頂きました。
シャンパンが世界中から愛されるようになったきっかけとは?
-まず、シャンパンはどのようにして広まっていったのでしょうか?
もともとシャンパンは、フランスのシャンパーニュ地方で生み出されたものですが、そこはちょうどパリの川上にあたる場所だったんです。そのため、電車などのない時代には、そこで造られた質の高いワインが川を伝って運ばれていました。それがパリで人気となり、世界中に知られるようになったそうです。それだけでなく、当時のフランスには王家がいたので、王様が飲むお酒として献上されていたということもシャンパンが有名な由来でもありますね。
-シャンパンは、なぜお祝いに使われるようになったのでしょうか?
やはりキラキラとした宝石のような色というのがあると思います。また、フランスでは君主として認められた歴代の国王やナポレオンなどの戴冠式をシャンパーニュ地方にあるランスのノートルダム大聖堂で行っていましたが、その際にシャンパンで祝杯をあげていたというのも理由のひとつだと考えられます。
ちなみに、1本のシャンパンには、約1億粒もの泡があるといわれているので、その粒の数と同じくらいシャンパンにまつわるエピソードはたくさんあるものなんですよ。
だからこそ西洋では、「無限に立つ泡のように、気分を持ち上げて元気にしてくれるもの」ということで祝福の場ではつねにシャンパンが飲まれています。そうやって長い年月をかけて積み上げてきた歴史も一緒に輸入しているからこそ、私たちもお祝いのときには飲みたくなりますよね。
シャンパンには“愛”が込められている?
-結婚祝いにぴったりのシャンパンは?
シャンパーニュのなかでも、もっとも高貴とされているブドウの産地に「Ay」という名前の有名な村があります。フランス語では、「アイ」と発音し、日本語の「愛」と偶然同じなんです。
そういうことから、結婚ということであれば、シャンパンを通して、大切な方に「愛」というメッセージを送ることができるのもいいかなと思います。「Ay」の表記はラベルに書かれているので、「愛を探してください」みたいに渡すこともできますよね。
-久保さんがお気に入りの銘柄はありますか?
やっぱりドン・ペリニヨンですね。日本ではバブルの時代に一躍有名になりましたが、本物だからこそ日本にもいち早く入ってきたわけですし、何があっても確固たるいいお酒だと感じています。いまでも変わらずに愛されていますが、お祝いのときには開けたいなと思いますね。
ちなみに、ドン・ペリニヨンはモエ・エ・シャンドン社のなかのブランドのひとつですが、本当にいいものだけを歴史と知識と英知を結集して造るお酒です。ブドウを収穫して、シャンパンになってから10年間は売らないので、それだけ熟成させて、一番おいしくなったところでやっとみなさんに飲んでもらうということなんですよ。
シャンパン選びで迷ったらこのシャンパンを!
-相手の好みがわからないとき、どのようなシャンパンがオススメですか?
そういう場合は、モエ・エ・シャンドンやヴーヴ・クリコのような一般的なシャンパンがいいですね。というのも、気候などに影響されることなく、世界中のどこでもおいしく飲めるように、広い視野で造られているお酒なので。
-では、お酒好きな方の場合は?
通常、製品というのは作ったときが100%で、そこからは劣化することはあっても、向上することはありませんが、シャンパンやワインには熟成という不思議な魔法のような要素があるので、生産者の手を離れたあとに価値があがっていくということが起こります。なので、お酒がお好きな方には少し熟成されているものがいいかもしれませんね。あとは、贈る方との関係性もありますが、もし長年の友人であれば、その思い出を遡れるような年号が入っているものを差し上げるというのもできますよ。
-男性と女性、それぞれに合うシャンパンもあるのでしょうか?
もちろん、黙って一緒に飲もうみたいな職人気質のシャンパンもあれば、洋服のようなデザインで美しくてスタイリッシュなシャンパンもあります。たとえば、クリュッグというシャンパンは味が男っぽいので、乾杯というよりも食事が終わって、「クリュッグを飲みながら、シガーでも吸いに行こうか」というように、また別の話に誘ってくれる感じです。
それから、マムという赤いリボンのシャンパンはF1で使われていることでも非常に有名で、栄光や挑戦という意味のシャンパンなので、こちらも男友達にはいいかもしれないですね。もし女性ということであれば、華やかなピンクのロゼもジュエリーみたいな色をしていてキレイだと思います。
-お客さまからお祝い用のシャンパンを求められときは、どのようなセレクトをしていますか?
まずは「どういうシチュエーションでシャンパンを飲みたいのか」というのを一番大事にしながら、毎回選ぶようにしています。ただ、モエ・エ・シャンドンとドン・ペリニヨンはシンボルであり、これだけシャンパンを世界中に届けられるようになったひとつの原点を作ったものでもあるので、この2銘柄を薦めることが多いですね。
何よりもシャンパンを通して気持ちを伝えられるのが一番!
-いま、久保さんがシャンパン電報を利用するとしたら、どのようなシーンで使いたいですか?
メッセージを添えて文化も届けるシャンパン電報はすごくいいなと思うので、僕はしばらく会っていない友達に送りたいですね。それで、「シャンパンを持ってみんなで集まろうよ」みたいな感じで、再会のためのお酒にしたいなと思います。
そこで近況報告をすれば、それがお祝いの場になるかもしれないですからね。そもそもシャンパンは、テーブルを囲んで誰かと一緒に飲むお酒ですし、「明日からも元気になるように乾杯しよう」と励まし合うのが日本のお酒の飲み方でもあるかなと感じています。
-今日は、お忙しいところ、ありがとうございました。
ボトルや泡に込められた思いはそれぞれ違うものばかりで、知れば知るほど奥の深いシャンパン。
「気持ちも一緒に受け取ってもらって、喜びを共有するというのが一番のメッセージ。主役として贈るものでありながら、みなさんの脇役としても存在するものがシャンパンだと思っています」という久保さんの言葉通り、お祝いの場にさらなる彩りを加え、あなたの大切な人にも、弾ける泡のような笑顔をもたらしてくれるでしょう。